A Phase Ⅲ Study of New Synthetic Retinoid Tamibarotene(Am80) Compared with ATRA in Maintenance Therapy for Newly Diagnosed Acute Promyelocytic Leukemia (APL): Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG) APL204 Study
A Phase Ⅲ Study of New Synthetic Retinoid Tamibarotene(Am80) Compared with ATRA in Maintenance Therapy for Newly Diagnosed Acute Promyelocytic Leukemia (APL): Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG) APL204 Study
タミバロテンは我が国で開発された合成レチノイドで、2005年に保険承認されている。その分化誘導能はオールトランスレチノイン酸(ATRA)の数倍高く、連日投薬によっても優れた薬物動態が得られるという優れた特性がある。しかしこれまでATRAとの比較は行われていない。JALSGは分子寛解を得たAPLに対する維持療法として、ATRAとタミバロテンのランダム化比較試験を行った。この試験は岡山大学の品川克至先生を主任研究者(PI)として行われ、彼のリーダーシップと熱意でこの発表にこぎつけたと言っても過言ではない。しかし、ASH口演発表と決まった喜びもつかの間、品川先生は体調不良のため、小生が代理として発表した。
試験の対象はPML/RARA陽性の未治療APL患者。まず、治療前の白血球数で層別化し寛解導入療法を行った。白血球数3,000/μL未満⇒A群、3,000以上10,000未満⇒B群、10,000以上⇒C群)。また、A~C各群で治療中にAPL細胞数が1,000/μL以上となった症例には化学療法を追加した(⇒D群)。
地固めの化学療法後に分子生物学的完全寛解(CR)を達成した患者をATRA(1日45mg/m²を3回分服×14日間)群とタミバロテン(1日6mg/m²を2回分服×14日間)群にランダムに割り付け、維持療法を2年間(3ヵ月ごとに8コース)実施。その後2年間追跡し、微小残存病変がモニタリングされた。1次評価項目は、寛解維持療法および追跡期間中の血液学的または分子生物学的再発、死亡をイベントとする無再発生存率(RFS)である。2004年~2010年に347例が登録され、344例が評価可能であった。
年齢中央値は48歳(16~68歳)。寛解導入療法により318例(92.4%)が臨床的完全寛解を達成した。リスク群別に見ると、高リスクのC群では寛解導入療法中の死亡率が12.9%と高く、臨床的CR率も87.1%にとどまった。分子生物学的CRを達成した270例がATRA群(136例)とタミバロテン群(134例)にランダムに割り付けられた。再発はそれぞれ19例(13.9%)、10例(7.5%)。死亡は2例、4例だった。寛解維持療法を受けた患者での5年RFSは、ATRA群83.5%、タミバロテン群90.8%と後者で高い傾向にあったが、有意差には至らなかった(p=0.154)。しかし、ベースライン時の白血球数が1万/μL以上という高リスク患者に絞って見ると、5年RFSはATRA群の60.3%に比べてタミバロテン群では87.7%と、有意に高かった(p=0.031)。寛解維持療法中の有害事象に関しては、高トリグリセライド血症と高コレステロール血症以外は全てグレード2までであった。
以上より、タミバロテンを用いた維持療法は認容性、安全性に問題なく、ハイリスク患者での優位性が示されたことより、タミバロテンはATRAに代わりうることが示された。タミバロテンは日本のみの発売されており、この試験結果には多くの注目が集まった。会場は満員で質問も多く、GIMEMAのフランチェスコ・ロココも温かい賞賛を送ってくれた。発表後、タミバロテンの関する問い合わせを幾つかメイルで頂き、ASH口演発表の影響の大きさを改めて感じた。この試験結果については論文を投稿しており、吉報が待たれる。