第50回ASH annual
meetingにJALSGからの御支援で参加させていただきました。
各国から約24,000人の参加があり、その規模の大きさに圧倒されました。
会場となったMoscone
centerとは、交差点を挟んで建てられた3つの大きな建物の総称であり、それぞれの中にいくつもの巨大な会場が設置され、これだけの人数をいともたやすく収容していました。
大半の参加者がメインとして考えているであろうEducation
program
は、同じ演題が2回設けられているためスケジュールが組みやすく、聞きたいものを逃すことなく聞くことができました。
1日に約1000題以上が発表される
ポスター会場ではビールが振舞われて、熱気を帯びていました。
立ち止まってポスターを読んでいると、演者からすかさず「Do
you have any questions?」と声をかけられ、国内の学会とは違う雰囲気を体感することが出来ました。
さて、いずれの演題も興味深かったのですが、新規薬剤により生存率や臨床経過が変化してきている多発性骨髄腫の演題に関しての演題について報告いたします。
Education
programでは、初回治療について複数の臨床研究をreviewしていました。
これまで、移植適応となる患者はVGPR以上に到達した後に自家移植併用大量化学療法(HDC+ASCT)を行うことがPFS、OSの改善につながることがわかっていました。
そこへ新規薬剤が導入され
dexamethasone(Dex)とthalidomide(Thal)、bortezomib(Vel)、lenalidomide(Len)との
併用療法がASCT前のCR/VGPR率を上昇させるという報告がみられるようになりました。
逆にVAD療法は新規薬剤とDexの併用療法を組み合わせた全ての臨床試験での比較において有意に劣っており、「VAD
is
dead」と強調し、移植前のVAD療法は行うべきではないと断言していました。
またThalとDexの併用療法では深部静脈血栓症の合併率が高く、治療
効果においては差がないことからVel+DexまたはLen+Dexが今後のASCT前の寛解導入療法として標準治療になるだろうと述べていました。
一般口演の「初発MM患者への治療」というsessionでは、出された5演題はすべて、新規薬剤(Vel,
Len,
Thal)とDexやCyclophosphamideとの併用療法に関してでした。いずれの報告もCR率30%以上、VGPR率60%以上、PR以上は
90-100%というpromissingな結果が報告されていました。
しかし、いずれも観察期間はまだ2年-3年といったところで今後の追跡が必要であること、ASCTの併用に関しては無作為割付試験が行われておらず、今後は新規薬剤単独と新規薬剤+ASCTとの比較試験を組んでいくことが必要であることが言われていました。
また、初回治療にASCTを組み込むことが必要であるのはどの患者層かを見つけていくことが今後の課題であると述べていました。
日本国内ではVelは再発難治性患者にしか適応がなく、Thalはやっと保険適応となったところ、Lenは未承認であり、欧米諸国との差を実感いたしまし
た。
以上、私が見たASHの本当にごく一部のみの御報告となりました。
その他この4日間に見たこと、感じたこと、学術的なことばかりでなく日常に至るまで、新鮮で面白く、来年度は自らの発表でASHに参加したいという気持ちを強く持ちました。
最後に、このような機会を与えてくださった方々に深く感謝いたしま
す。