この度は、NPO-JALSG支援機構より研修費補助を受け、2009年12月開催の第51回米国血液学会へ
参加させていただきました。12月4日午前に
成田を発ち、現地時間の同日夕刻にニューオリンズの地に
降り立ってから8日の早朝に現地を発つまで、大変濃厚な経験となりました。
日本からニューオリンズへの直行便はありませんので、4日はワシントン経由で現地入りいたしました。
単身での旅程ということもあって不安と期待が錯綜
し、jet
lagに陥る隙もなかったように感じます。
現地で当科の先生と合流した時の安堵感ほど、翌朝足を踏み入れた学会場の規模と人の群れに圧倒され
た時よりも、
自分はなんてちっぽけな人間だと実感させられた時はありませんでした。
ホテルとコンベンションセンターを結ぶ循環バスがありましたが、そう遠くはなかったので、案外冷たい12月
のアメリカ深南部の空気を肌に感じながら毎日
徒歩で通いました。事前にNon-Member in trainingとして
on-line
registrationを済ませていたので、5日はすんなりとずっしり重たいプログラムを受け取って、
Education
Programに腰を落ち着けました。
Educcation Programは同一演題が日時を違えて2回に渡って予定されますので、代表的なテーマを選んで
比較的効率良く聴講することができました。
慢性骨髄性白血病(CML)はafter a decade of
Imatinibと銘打って、随一の巨大な会場がほぼ満席となる
盛況でした。Imatinib登場から約10年、飛躍的に細胞遺伝学的完全寛解
(CCyR)達成率を向上しましたが、
一体いつなら安全に休薬できるのかという難しい問題があります。また本邦でもDasatinibや
Nilotinibといっ
た新規チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が既に登場していますが、抵抗例や不耐例は少なからず存在し、各国で
様々な臨床研究が
進行中であることを知りました。
多発性骨髄腫(MM)もCMLと同じ巨大な会場がいっぱいとなりました。MMの領域でもThalidomideや
Lenalidomide、
Bortezomibといった新規薬剤の登場が目覚ましい状況です。これらとDexamethasoneや
Adriamycin、
Cyclophosphamideとの併用療法に関する報告は多く、自家造血幹細胞移植を伴う大量化学
療法が適応となる若年MM患者に対する初期治療とし
て移植前後のresponseはどうかという視点でreview
されていました。VAD療法はもはやゴールデンスタンダードではないのだと改めて
強調されていました。
8日早朝。日の出前のルイ・アームストロング国際空港は各国のhematologistで溢れかえっていました。
雪のシカゴを経由して、おそらく学会参
加者ではなさそうな風体をした、隣席の外国人男性に求められるが
ままに最初の1杯だけ赤ワインで乾杯をして、機内食が美味いだの不味いだのを論ずることも満足でない
自分の英語力を呪いました。満腹でもあり、ヘッドホンと毛布を被って日本映画をかけ流しながら日本語の
夢を見て、日本時間の9日夜に帰って参りました。
最後に、このような貴重な機会を与えていただいたNPO-JALSG支援機構に感謝申し上げるとともに、
多忙極まる日常業務を押し付けた諸先生方と、休みなく病気と闘う患者さんたちへ、文句も言わず送り出し
ていただいたことを心より感謝いたします。