まずは、2010年度のJALSG Young Investigator ASH Travel Awardに選出していただき、
誠にありがとうございました。
会場となったオレンジカウンティ・コンベンションセンターは、アメリカでも有数のコンベンションセンターで
あり、メイン会場の端から端までは1km近くありました。会場の中心である大きな吹き抜けのホールは、
セッションが終わるたびに数多くの血液医・研究者で埋め尽くされました。次にどのセッションを聴こうか、
プログラムを睨んでいる参加者の姿も多く見られます。
国籍や風習は大きく違うのに、その姿から何を考えているのかわかるのは一参加者として考えることが
同じだからでしょう。各国の血液内科医の学ぶ志のようなものは、きっと同じなのです。
そう理解できたことで、ASHという普段の自分の規模から考えれば大きな学会の中で、自分が同じ
「参加者」として会場にいることを実感しました。
ASHの教育講演は日と時間を変えて2度行われます。その分、同じ時間に興味のある講演が重なっても、
片一方は時間を変えて聴くことができるメリットがあります。
MDSの教育講演では、IPSSについて触れられていました。MDSでは染色体異常が予後に与える影響が
重視されてきていましたが、予後因子として染色体異常だけでなく遺伝子異常についても重要性が説かれて
いました。
遺伝子異常について、基準として重く取り入れた新しい予後分類 IWG IPSSが現在、16施設8000人以上
を対象として作成中とのことでした。
数多くのセッションがありましたが、新規薬剤の報告はやはりインパクトがあります。
CMLに対してPonatinibという新規TKIの第Ⅰ相試験が行われていました。Pan BCR/ABL Inhibitorと
銘打ったこの薬は、T315IのBCR/ABL変異を持つCMLに対しても、生存年数の中央値が22カ月、
この間をCPで経過したとのこと。副作用は他の2nd TKIのようにQTc延長があったり、膵酵素上昇が
みられることがあったりするようですが、T315I変異に対する新しい内服治療として、試験の続行が期待
されます。
国際学会でも、やはり多くの発表者、血液医の先輩方が工夫しよりよい治療や病態のさらなる解明を
目的に行った研究成果が発表されます。その成果を拝借し、日々の診療に生かせればと多くのセッション
を回りました。
この経験を目の前の患者さんに還元し、さらにそこから発見し次のステップとして、私も国際学会へ還元
できるような発表ができたらと考えます。私たちにわからないことは、同じように国際学会でも悩んでいる
ことなのですから。いつになるかはわかりませんが、その視点を持つことができたことが今回得られたもの
かと思います
最後に、このような素晴らしい機会を与えてくださったJALSGの方々、多忙な日常診療の中ASHへと
気持ちよく送り出していただいた佐倉先生をはじめ病棟の諸先生方、病棟スタッフの皆様に、心より感謝を
申し上げます。