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中嶋 ゆき 先生(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター 血液内科)

ASH2010 Report 横浜市立大学附属市民総合医療センター 血液内科 中嶋 ゆき

この度は、JALSG Young Investigator ASH Travel Awardの支援のもとフロリダOrlandoで行われたASH
に参加させて頂きましたことを、この場をお借りしてお礼申し上げます。簡単ではありますが、ASHに参加
した感想と興味を持った演題について述べさせていただきます。

 今回参加させていただいたASH annual meetingは私にとって初めての国際学会でした。
会場に着いてまず驚いたのは会場の大きさでした。巨大な建物全てが学会会場となっており、
その中を国際色豊かな多勢の人たちが行き交う様は国内の学会では見ることのできないものでした。
また、いくつかのメインとなる講演会場は非常に大きく、巨大なスクリーンが前方のみならず会場の中央にも
設置されており、会場の大きさを印象付けていました。前日の講演High lightsが数ページに渡る新聞様に
なって会場建物内の各所で配られていることにも学会の規模の大きさを感じました。

 臨床の分野講演は週の前半は教育講演を中心に、週の後半にOral Sessionを聴講しました。
参加した講演に共通して抱いた感想は、臨床試験の対象となる患者母体数がとても多く、多数の臨床試験
が積極的に行われているということでした。また、教育講演もOral Sessionでも、大半の演者が最後に、
治療を行うのであれば臨床試験に参加するべきである、と強調していたことがとても印象的でした。
また、ヨーロッパなどでは国を超えて多国間で臨床試験が行われていました

 特に興味深かった講演は、ドイツで行われた多施設研究、第二相臨床試験のOral Sessionで、
「高齢AML患者に対する寛解導入療法および地固め療法としてのFLT-3阻害薬+従来の寛解導入/
地固め療法 vs プラセボ+従来の寛解導入/地固め療法」というものでした。臨床試験では“7+3”寛解導入
療法とキロサイド大量療法による地固め療法にFLT-3阻害薬(Solafenib)を併用する治療群と、
“7+3”寛解導入療法/キロサイド大量療法の地固め+プラセボ群の2群に高齢AML患者をランダムに分類
し、全生存率(OS)、早期死亡、無イベント生存率(EFS)を比較検討していました。

FLT-3変異(+)の患者では、Solafenib併用群とプラセボ群の2群間でOSは有意な差がなく、
EFSはプラセボ群で若干良好でした。再発率は2群間で差がなく、Solafenib併用群では感染がプラセボ群と
比較して多く、治療開始60日以内の早期死亡率がプラセボ群より多かったという結果でした。
また、FLT-3変異(-) の高齢AML患者においてもSolafenib群で早期死亡率が多かったです。
FLT-3変異の有無に関わらず、奏功率はプラセボ群で優れており、早期死亡率はSolafenib群で高く、
OSは両群間で差が無かったです。以上より、第二相試験の結論としてSolafenib併用の寛解導入/
地固め療法は有益では無い、というものでした。予後不良の遺伝子変異とされているFLT-3の阻害薬で
あり、効果が期待されているだけに、臨床試験の重要さを痛感した講演内容でした。

最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださったJALSG先生方および多忙な状況にも
関わらず、快くASH annual meetingに送り出して下さった横浜市立大学付属市民総合医療センター
血液内科の先生方に心より感謝致します。
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