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葉名尻 良 先生(都立駒込病院 血液内科)

ASH2011Report  都立駒込病院血液内科  葉名尻 良

 この度はNPO-JALSGのご支援により、2011年12月に米国サンディエゴで開催された
第53回米国血液学会に参加させていただきましたのでご報告させていただきます。
 今回のPlenary Sessionはどの演題も興味深く、特にヒトiPS細胞から不死化巨核球を
用いた血小板の生産(Abstract 2)や、血友病Bに対する遺伝子治療(Abstract 5)は基礎研究が
臨床応用された大変素晴らしい発表でした。また下記の重要な臨床試験の発表があり、注目を集めました。
 
# Abstract 1

BMT-CTNによる非血縁者間BMTとPBSCTの多施設共同ランダム化比較試験。全生存率、無病生存率、
移植関連死亡率、再発率はどれも差がなく、PBSCTで生着率が向上し慢性GVHDが増加するという結果
でした。
本邦でも非血縁者間末梢血幹細胞移 植が開始となっており、日本人での同様な多施設共同研究が必要で
あると感じました。

# Abstract 6

50-70歳のde novo AMLに対するGO分割投与を含んだ寛解導入療法と標準的寛解導入療法のランダム
化比較試験。寛解率は同等であったが、全生存率、無イベント生存率がGO 投与群で有意に良好である
という結果でした。リスク別でみると、favorable/intermediate risk群で成績が向上しており、MRCやSWOG
の結果と同様でした。
従って症例を選択して、有害事象に注意しながらGOを寛解導入療法に取り入れることが重要であると
分かりました。今後は日本人でも寛解導入療法、地固め療法にGOを組み込んだ臨床試験の実施が
望まれます。

 Ticketed Sessionの「Haplo vs CBT」に参加しましたが、互いにそれぞれの利点・欠点について議論し
大変勉強になりました。今後、BMT-CTNでランダム化比較試験を行う予定であり、その結果が待たれます。
またMartin TallmanのMeet the Expertsにも参加しましたが、ほとんどの内容がいつも指導医の先生方に
教えていただいているものばかりであり、安心いたしました。ただ leukostasisのときは結構積極的にleukapheresisを行うとおっしゃっておりました。後半は以下のように造血幹細胞移植のセッション を中心に
参加しました。

# Abstract 157

AML CR1にTBI-baseの骨髄破壊的前処置(TBI12/CY120)と非骨髄破壊的前処置(TBI8/Flu120)の
ランダム化比較試験。非骨髄破 壊的前処置で全生存率、再発率は変わらないが、移植関連死亡率が
低下するという結果でした。特に40-60歳ではTBI8/Flu120によるRISTを 選択してもよいのではないかと
結論付けていました。

# Abstract 162
Imatinib eraでのCML CPに対する血縁者間同種造血幹細胞移植とimatinibのランダム化比較試験
(genetic randomization)。結果は当然ながら全生存率、無イベント生存率とも移植群で劣っていました。
倫理的な問題はさて置き、重要な結果として解釈 する必要があると思います。

# Abstract 319
2001年のNEJMでも発表されたFred hutchinson cancer research centerからの血縁者間PBSCTと
BMTのランダム化比較試験の長期フォローアップ。以前の発表では2年全生存率、無病生存率ともに
PBSCT群で 良好でしたが、長期フォローアップでは無病生存率の差は維持されたが、全生存率では
有意差がなくなったという結果でした。

# Abstract 320
MD Anderson cancer centerからの報告で、T-cell replete haploSCTでpost-transplant high dose
 cyclophosphamide(HDPTCy)を行うと、感染症の発症率が減少し移植成績が向上したという結果。
私自身不勉強でHDPTCyについてあまり知らなかったので非常に勉強になりました。Abstract 833でも
同様な報告がありました。

# Abstract 324
AMLに対するRIST後に azacitidineを投与すると3サイクル目でTregが増加し、腫瘍特異的CD8+T細胞が
増加したという報告。AzacitidineによりTregが増加することは知られているが、同種移植後の体内でも
確認された重要な研究でした。 同種移植後再発は重要な問題であり、azacitidineの維持療法について
日本でも臨床試験を行う必要があると思われます。

# Abstract 830
高リスクの血液腫瘍にRIST前処置で haploとCBをco-infusionするというChicago大学からの素晴らしい
報告(すでにBlood誌に論文化されているようです)。好中球 の生着中央値11日、血小板は19日と良好。
興味深いことに、キメリズムはday30ではhalpoが優位ですが、day100以降はCB優位となるそう です。Abstract 654で再生不良性貧血に対する同様な報告がNIHからありました。しかしながらNIHの報告では、
T-cellのキメリズムはCBが終始優位であり、や や違いがありました。

 最後に、貴重な経験をさせていただき、関係者各位に感謝申し上げます。
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