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松田 安史 先生(福井大学 血液・腫瘍内科)

ASH2012Report  福井大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科  松田 安史

 この度、JALSG Young Investigator ASH Travel Awardに御選考頂き2012年12月8~11日まで
ジョージア州アトランタにて開催された第54回米国血液学会総会に参加させて頂く機会を頂きまし た。
まず始めにこの場をお借りして今回の選考に関わられた先生方やスタッフの方々に心よりお礼を
申し上げます。

  私にとって初めての国際学会参加となりましたがまず会場に着いて思ったことは、
とにかく日本では感じたことのないスケールの大きさだということでし た。会場の大きさもさることながら、
どの会場でも非常に興味深い内容の講演が行われており、教育講演は期間内に2回行われ、
時間も毎朝7時台から始まるに も関わらず会場がほぼ満席になる程の熱気で、また国籍も年齢も(かなり
御高齢の方もおられました)様々な先生方が一堂に会し世界の最新の知見を共有し、質 問し、メモを取り、
とても躍動感のある学会でした。
また、次の日には前日のトピックスが新聞になって会場で配られていたのもとても新鮮でした。
学会では malignancy関連を中心に回りましたが、以下にいくつか印象深かったものを挙げさせて頂きます。

  ・AMLに関しては、まだまだ再発が多く予後の悪い疾患であるので、予後リスクや治療反応性に
基づき最も適切な治療を受けるために outcomeを正しく予測するbiomakerを見つける必要があるという
ことで、染色体による分類でintermediate-risk群の患者を更 にFLT3-ITD、NPM1、IDH1/2、ASXL1、
MLL-PTD、PHF6、TET2、CEBPA、DNMT3A、trisomy 8等の遺伝子変異等を用いて再層別化する
方法をMemorial Sloan-Kettering Cancer CenterのDr.Ross L.Levine等の教育講演にて学びました。
また、plenary sessionではCleveland ClinicのDr.Hideki MakishimaよりSchinzel-Giedion症候群の
SETBP1遺伝子の変異がMyeloid malignancyを進行させる(#2)という発表がありましたが、
内容もさることながら同じ日本人の若い先生がこのような素晴らしい発表をされている ということに
とても深い感銘を受けました。

  ・APLに関しては、plenary session にてUniversity of VergataのDr.Francesco Lo-Cocoにより
GimemaとSAL-AMLSGの共同研究による非高リスク群の初発APLに対しATRA+ATO療法とATRA
+IDR療法の比 較第Ⅲ相試験の結果が報告されました(#6)。
2年EFSにおいてATRA+ATOはATRA+IDRに対して非劣性であり、血液毒性も軽微で他の有害事象
もコントロール可能な範囲であったため標準療法をなりうることが示されましたが、一部の急性白血病に
おいては化学療法を使わずに治療できる時代になって きたのかと大変印象に残りました。
また、本邦からも名古屋大学の直江知樹先生よりJALSG APL204試験のAm80による維持療法について
ATRAとの比較第Ⅲ相試験にて、高リスク群に関しては再発抑制効果がATRAと比較して有意に高いとの
報告がされており(#410)、日々臨床データを蓄積することの重要性を再認識しました。
当院でもJALSGにしっかり症例を登録させて頂き世界に発信 出来る日本のデータを更に積み重ねて
いくことに尽力したいと思いました。

  ・CMLに関してはポスターにてENESTnd 4年の報告が出ておりnilotinib群の4年時のMMR達成率は
73~76%とimatinib群の56%と比較して高値であり、その差も広がっていました(#1676)。
他にも DASISION 3年の報告を元に1st lineとしてTKIを使用した症例で3か月、6か月の早期に深い
cytogenetic/molecular responseを得られた症例は3年後のoutcomeが改善する(#1675)という調査も
あり、2nd TKIを使い早期にmolecular responseを得ることの重要性を再確認する一方で、
Hammersmith HospitalのDr.David Marinによる教育講演では治療に際しCCyRを達成することは
生命予後を延長するものの、すでにCCyRを獲得している人が更にMMR以上の深いmolecular responseを
得ることがOSやPFSの更なる改善に繋がっているという明らかなデータは無いということから、
高い割合でmolecular responseを得られるという理由だけで特異的なTKIを最善の薬剤とすべきではなく、
そこには様々な要因を考慮しなければならないという内容のものがあり、治療は様々な角度から常に検討を
加え続けていかなければならないことを学びました。
またSTIM試験に関する教育講演やoral session ではPACE trialの第Ⅱ相試験の結果(#915)なども印象に
残りました。

  ・悪性リンパ腫に関してはSarah Cannon Research InstituteのDr.Ian W.Flinnにより進行期
indolent NHLまたはMCLにおける初回治療としてのB-R療法とR-CHOPまたはR-CVP療法との非盲検
ランダム比較試験の結果が報告されました (#902)。
副作用プロファイルは違うもののCR率においてはB-R療法のR-CHOPまたはR-CVP療法に対する非劣性
が示されるだけでなく、 MCLにおいては優越性も認められたということで今後の第1選択としての位置付け
がどのようになるのかとても注目されました。

  他にも非常に勉強になったことが多かった反面、反省点も多く、当然発表は全て英語でしたので、
演者の講演内容についていけず、次々と変わるスライドに メモも追いつかず、もう少し真剣に英語を
勉強しようと思った次第です。
しかしいつかは私もこのような場で発表をしてみたいと強く思う様になりました。
私は これから大学院生として実験を始めていくところですが、そのような時期にこのような素晴らしい
機会を頂き大きな刺激を得ることが出来、大変有意義な時間を 過ごすことができました。
最後になりましたが、重ねて今回のAwardに関わられた先生方やスタッフの方々と、忙しい中ASHに
送り出してくれた当科ス タッフに心よりお礼を申し上げます。
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