この度はJALSG Young Investigator ASH Travel Awardで大変貴重な機会を賜り、深く感謝申し上げます。
今回参加した第55回米国血液学会について、簡単ではありますが御報告致します。
開催地であるNew Orleansはジャズや香辛料が有名な、南部らしく温暖な気候の都市です。
残念ながら今回は数十年に1度の寒波に見舞われ、乗り継ぎ便の欠航も相次ぎ、キャンセルとなるポスター発表も散見されました。私自身は初めての海外学会への参加でしたが、出発から初日の参加までが単独での行動だったこともあり、期待は勿論実は不安も大きく胸を占めておりました。会場は想像以上に広く、演題も多岐にわたるため、事前にiPhoneにダウンロードしたASH公式アプリでabstractと会場地図を参照に行動スケジュールを組み、それらを実行に移すべく常に早足で移動する日々でした(実際、講演会場同士が離れた場所ではそれでも15分はかかりました)。
私はEducation programを中心に、Scientific ProgramやSpecial Interest Session等、現在主に診療している
AML/ALL、MDS、造血幹細胞移植に関する演題を回りました。その幾つかを以下に挙げます。
・Friday Satellite Symposia :学会開催前日にコーポレーションセミナーが開かれています。MDSに関するSessionでは、バルプロ酸+AZA、LEN+AZA、IDR+AZAとAZA単独の比較試験や、VorinostatとAZAの併用など、新規薬剤の併用治療が紹介されていました。また”Consensus or Controversy?Live”でのNon-Hodgkin LymphomaのSessionでは、CLLにおけるobinutuzumabやidelalisib、ibrutinibを含めた治療の他、FLにおけるRituximab(R)単剤治療やR squaredレジメンの比較などを、配布されたタブレット端末を使用したアンケート型の対話形式で進んでいき、急速に進む新たな治療法開発が世界でどのように受け入れられているのかを学びました。
・Education program/Plenary session:ALL治療・Non-Hodgkin Lymphoma治療の変遷や、High-risk MDSの移植におけるドナーや前処置の選択、FLT3変異を有するAML治療など、現在標準となっている治療・マネジメントから問題点とその研究段階についてまで、幅広く知識を得ることができました。また、Myeloma治療についての発表で、移植非適応症例に対するMPTとRdの比較において、Rdの優位性が示されていました。
・Scientific Program:T-ALLにおける、NOTCH-1を標的因子とした治療の問題点について、その有害事象のみならず、GSI耐性についてNotchのOn/Offが混在することやPTENの欠失、BETファミリータンパク質などの寄与が示唆されていることなどが報告されていました。
今回のASH参加を通し、世界中の臨床家・研究者が様々な方法で血液疾患に立ち向かっていることに感銘を受けると共に、大小に拘らず各国各施設の症例や経験を発信していくことの大切さ・使命を改めて感じ、自身を振り返り少なからず悔しさ・歯がゆさを覚えました。今後は発表者として貢献できるよう、普段の診療は勿論のこと、統計学や語学についても力をつけるべく努力して参りたいと思います。
最後になりましたが、参加の機会を作って頂きましたJALSG支援機構の先生方・事務局の皆様、留守中の業務を代行していただいた済生会前橋病院の先生方に深く感謝致します。また、常に人材不足の状況にある血液内科において、JALSG Young Investigator ASH Travel Awardの存在が、全国の臨床研修医にとって血液内科医を志すより大きな魅力のひとつとなっていくことを願っております。