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福原 傑 先生(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)

ASH2014参加報告 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科 福原 傑

 今回JALSG Young Investigator ASH Travel Awardにご選出いただき、第56回ASH meeitng
に参加することができました。さまざまな最新の知見を得ることができ、非常に有意義でありました。
僭越ながら私の感想を述べさせていただきます。

 プレナリーセッションでは60歳以下の若年AMLに対する標準的な化学療法にsorafenibの上乗
せを評価するランダム化比較第II相試験(SORAML試験)の結果が報告されました(#6)。
CR割合は両群で有意差を認めませんでしたが、主要評価項目であるEFSならびにRFSは、
sorafenib群で有意に改善を認めました。観察期間がまだ短いため追跡結果を待つ必要があり
ますが、有望な新規分子標的薬と考えられ、今後の報告が待たれます。

 一方、高齢者のAMLに対しても一般演題で複数の期待される報告がありました。
再発難治性AMLに対してキノロン誘導体であるvosaroxin+キロサイド併用療法とキロサイド
単剤療法を比較した第III相試験(VALOR試験)では、主要評価項目であるOSに有意差は
認めなかったものの、サブグループ解析で高齢者において有意にOSの延長が認められました
(LBA-06)。また、初発高齢者AML(芽球>30%)に対するazacitidineと従来の治療レジメン
との第III相試験(AZA-AML-001試験)のサブグループ解析では、異形成を伴うAMLや予後
不良な染色体を有するAML患者においてOSの有意な延長が認められました(#10、#621)。
高齢者AMLは予後不良ですが、徐々に新規治療選択がでてきている印象を受けました。

 自分が最も興味を持ったのは個別化治療としての新規薬剤の開発に関する報告でした。
FLT3変異を有するAMLに対する新規FLT3阻害剤(#388、#389)、MLL転座を持つ白血病に
対するDOT1L阻害剤(#387)、IDH2変異陽性造血器腫瘍に対するIDH2変異酵素阻害剤(#115)、
CBF-AMLに対するdasatinib(#8)など複数の新規薬剤の結果が報告されました。
次世代シークエンサーの登場によりゲノム解析が容易となり、今後も患者の層別化による
個別化治療の流れは続いていくと思います。今後臨床を行っていく上でbiologyの研鑽も続けて
いくことが重要だと実感いたしました。

 今回のホットな話題として、B-ALLに対するCD19を標的とするキメラ抗原受容体(Chimeric
Antigen Receptor;CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法についての報告が複数なされました
(#379-384)。
中でも、再発、難治性CD19陽性小児ALLに対する第I/II相試験(CTL019)では、39人が登録され、
92%と高いCR割合が得られました(#380)。まだ観察期間が短く、B細胞の形成不全など特有の
有害事象も認めますが、非常に期待される治療法であり、今後の報告が待たれます。悪性リンパ腫
のセッションではPD-1抗体に関する臨床試験の結果が複数報告されており、いよいよ免疫療法が
確固たるエビデンスをもって臨床の現場に登場しつつあると感じました。

 最後になりましたが、ASH meetingへの参加という貴重な機会を提供していただきました
NPO-JALSG支援機構の事務局ならびに先生方に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。   

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