私はこの度、JALSG Young Investigator ASH Travel Award 2023のご支援により、65th ASH Annual Meetingに参加させていただきましたので、ご報告させて頂きます。
今回初めて現地サンディエゴでASH Annual Meetingに参加させて頂き、学会会場の規模の大きさだけでなく、それぞれの研究とその研究者の質の高さに圧倒されました。様々なバックボーンをもつ研究者が同じ血液疾患を様々な角度で研究していることを、紙面上ではなく肌身で実感し、今後の自身の研究の方向性や研究内容に求められる水準への認識を改めることとなりました。 私は学生時代から微生物学分野で基礎研究を行っていた背景もあり、腸内細菌叢や自然免疫、免疫微小環境に興味を持ち、様々な臨床研究を企図・開始しています。そうした背景から免疫微小環境や腸内細菌叢といった臨床と基礎をつなぐ研究のセッションに多数参加させて頂きました。免疫微小環境の研究では、MDSからAMLへ進展していく状況において、NK細胞ならびにCD8陽性の細胞傷害性T細胞の割合がリンパ球の中で増加するにも関わらず、NK細胞においてはCD16の発現やサイトカインの産生能が損なわれ、抗腫瘍効果を示せないことをsingle cell RNA-sequenceとin vitroの実験系を併せて解析を行っている研究がありました。研究自体の質もさることながら、改めてin vitroとin vivoを組み合わせることで見えてくる病態生理があることを実感しました。また腸内細菌叢をメインとしたセッションでは、腸内細菌叢と移植後のGvHDや化学療法での治療効果との関連の研究が発表、紹介されていました。特にGvHDに関連が以前より指摘されているImipenemやMeropenem, tazobactam piperacillinによる治療が、どのような機序でGvHDに影響を及ぼしているかの研究が進んでおり、抗菌薬により生じたα-多様性の消失はどのような介入で改善されるのか、多様性の消失によりどの菌が増殖し、獲得免疫にどのような影響を及ぼすのかについて解析が進んでおり、研究範囲の広さに驚かされました。また同セッションに多くの臨床医や研究医が参加し活発な議論が行われており、海外での注目の高さを再認識することとなりました。今後、白血病や骨髄異形成症候群を中心として腸内細菌叢や免疫微小環境の研究を行い、様々な背景をもつ研究者と議論し高め合っていきたいと思いました。 最後となりますが、JALSG会員の皆様ならびに選考委員の方々への心から感謝を申し上げます。今回の機会は私にとって臨床と基礎の両面で知見を深める貴重なものとなりました。今後はこの経験を活かし、臨床における患者ケアの向上を図るとともに、病態解明や新規治療標的の発見に向けて、日々精進してまいります。この度は本当にありがとうございました。 |