この度、JALSG Young Investigator ASH Travel Award 2023の御支援を賜り、65th ASH Annual Meeting & Expositionに参加させていただきました。Web参加ではありましたが、ポスター発表であってもスライドと音声が視聴可能であり現地参加さながらでしたし、学会終了後も一定期間視聴可能なプランを支援していただけたおかげで、非常に充実した内容を学ぶ機会を得ることができました。
私は現在、都立駒込病院で後期研修医として血液内科診療に励んでおります。同種造血幹細胞移植やCAR-T療法を中心とした細胞療法を軸として、私自身も再発・難治性血液疾患の治療に注力させていただいております。今回のASHでは特に再発難治性白血病と同種移植後合併症に対する最新の知見を得ることを目的に様々なセッションを拝聴いたしました。 中でも印象に残ったのは、KMT2A遺伝子再構成陽性の再発・難治性急性白血病に対するメニン阻害薬revumenibの第II相試験(AUGMENT-101試験)の結果です。本試験の中間解析では、CR率22.8%、CRc率43.9%、ORR 63.2%という良好な成績が示され、さらに奏効例の多くでMRD陰性が達成され、移植へ移行できた患者も少なからず認められました。予後不良とされてきたKMT2A再構成陽性白血病の再発難治例に対し、大いに期待が持てる結果ではないかと感銘を受けました。 また、慢性GVHD関連の発表も大変興味深いものが多くございました。再発・難治性慢性GVHDに対する抗CSF-1R抗体axatilimabの第II相試験(AGAVE-201試験)では、3つの投与量の有効性と安全性が検討され、低用量群で最も高い有効性と良好な忍容性が示されていました。Axatilimabは、慢性GVHD病態に深く関与するCSF-1R陽性単球/マクロファージを標的とする新たなアプローチとして注目されております。他にも慢性GVHDの予防を目的とした抗CD20抗体オビヌツズマブやDPP-4阻害薬シタグリプチンの試験結果も印象的でした。日本国内では2023年8月にルキソリチニブが追加承認されたばかりですが、再発・難治性のGVHDに対する新たな選択肢が増えることは患者さんにとって朗報であり、私自身も大変喜ばしく感じた次第です。 ASHへの参加を通じ、血液領域の研究が基礎・臨床の両面から目覚ましい進歩を遂げていることを改めて実感いたしました。その一方で、日本から世界に向けてエビデンスを発信していくことの重要性も再認識させられました。本会で得られた貴重な経験を糧に、微力ながら難治性血液疾患に立ち向かう新たな治療開発の一助となれるよう、さらに精進してまいる所存です。 最後になりましたが、このような学びの機会を与えてくださいましたJALSGの諸先生方に心より御礼申し上げます。引き続き、血液疾患に苦しむ患者さんに希望の光を届けられるよう励んでまいります。この度は誠にありがとうございました。 |