この度、JALSG Young Investigator ASH Travel Award 2024に採択いただき、66th ASH Annual Meeting & Expositionに参加させていただきました。今回は現地参加が可能となり、サンディエゴの会場で各国各施設から来場されている先生方の口演やポスター発表を聴講することができ、非常に有意義な経験となりました。また、国際学会に参加したのは初めてでしたが、現地での活発なdiscussionに触れることができ、今後の学術集会に参加する上で良い学びになりました。
日常診療として白血病診療や造血幹細胞移植に携わっておりますが、今回のASHで最も印象に残っていることは白血病に関する新規薬剤開発の話題が非常に充実していたという点です。特に印象に残っている演題としては、NPM1変異またはKMT2A遺伝子再構成を有する初発急性骨髄性白血病に対するMenin阻害薬ziftomenibを化学療法と併用したKOMET-007試験の報告があります。本試験はPhase 1aであり、今回の報告は中間解析結果に関してですが、ziftomenibの忍容性は良好であり、かつ、完全奏効率はNPM1変異陽性症例で100%, KMT2A遺伝子再構成陽性症例で83%と非常に良好な結果でした。予後不良とされるKMT2A遺伝子再構成陽性AMLの診療に大きく変わりうる研究結果と感じました。一方で、AMLにおける新規薬剤開発は次世代シークエンサーによる遺伝子解析と表裏一体であるように思われました。国内でも今後、造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査が可能となりますが、今回の学会で学んだことを日常診療に活かせるよう研鑽していきたいと思いました。
同種造血幹細胞移植にかかわる話題で興味深かったものとして、GVHD予防戦略としてのアバタセプトがありました。米国ではPTCyでのGVHD予防がHLA半合致血縁者間移植に限らず、HLA適合または不適合非血縁者間移植にも実施されておりますが、アバタセプトもFDAに承認され実臨床で使用されております。ポスター発表やspotlight sessionsでアバタセプトに関する発表が多く、期待される成績でした。心疾患を有する症例でPTCyの使用が困難である状況は日常診療で経験することがありますが、それだけでなく、PTCyは感染症イベントが多く課題となっているとする口演もあり、今後のATG, PTCyとアバタセプトの使い分けがどのように確立されていくかも非常に興味深いものと思われました。
ASH 2024へ参加し、血液診療の研究の最先端に触れることができ、今後の臨床・研究を行う上で非常に良いモチベーションとなりました。後輩医師にも機会があるごとに、貴重な経験を伝えたいと思います。今回、このような機会を与えて下さった、JALSGの関係者の皆様に深謝致します。今後も目の前の造血器腫瘍の患者さん診療や、日本の血液疾患診療の底上げに貢献できるよう努力して参りたいと思います。
