よりよい白血病治療のために
HOME >> 海外学会報告 >> ASH参加報告 >> 2024年 >> 山田 裕己 先生(済生会横浜市南部病院 血液内科)

山田 裕己 先生(済生会横浜市南部病院 血液内科)

66th ASH Annual Meeting & Exposition 参加報告

2024年12月7日から10日にかけて、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された第66回アメリカ血液学会(ASH)年次総会に参加する機会を得ました。本学会は世界最大級の学術集会であり、日本で行われる学会とは演題数や会場の規模どれをとっても驚くべきものでありました。教育講演を中心にオーラルセッションを聴講し複数のポスターを閲覧しましたので、その概要と所感をご報告いたします。

まず、急性骨髄性白血病(AML)の治療戦略についてのセッションが印象的でした。AML治療において様々な遺伝子変異が検索できるようになり(日本では実臨床では困難ですが)、それらに対する分子標的療法が数多く検討されています。今回の学会では本邦未承認のIDH1/2阻害薬を従来のベネトクラクス+HMA(アザシチジン)療法に加えるといった、従来の化学療法+分子標的薬について検討した発表を多く目にしました。いずれもOSやPFSを有意に改善したと報告され、特定の遺伝子変異を持つ患者に対する個別化医療の重要性が改めて強調されており、これらの治療法が実臨床に与える影響の大きさを実感しました。5年後には同様の治療が本邦でも使用できるようになっていることを期待しました。

悪性リンパ腫に関連するセッションも非常に興味深い内容でした。特に、二重特異性抗体や三重特異性抗体(さらには四重特異性抗体)が数多く開発されている点が挙げられます。背景としては、米国でもCAR-T療法に対するアクセスは必ずしも容易ではないようで、準備や投与が簡便な二重特異性抗体にも重点が置かれている様子でした。特に濾胞性リンパ腫の教育講演では本邦で承認されているEpcoritamabはもはや過去のものとなりつつある様子でMosunetuzumabがもっぱら使用される二重特異性抗体として紹介されていたことに驚きました。MosunetuzumabとPolatuzumab Vedotinを併用したR/R DLBCLの治験が本邦でも行われていますが、本邦でもMosunetuzumabが使用できるようになる時が期待されます。

ポスターセッションでは様々な新進気鋭の研究に触れるとともに、直接発表者とのディスカッションを通じて、異なる国や地域での取り組みや課題に触れることができました。特にR/R AMLに対するFLT3とCD3の二重特異性抗体の発表をしていた方にAMLのMRD測定についての話題になった際、「日本ではAMLのMRDは(特別な遺伝子変異がなければ)保険診療下で測定できない。FCMを用いたMRD測定もできない。」と答えると驚かれてしまいました。仕方がないことではありますが、本邦の血液疾患診療の限界を感じた場面でありました。

学会全体を通じて、血液学領域の研究が日々進化していることを実感しました。特に、個別化医療や次世代治療法の開発における進展は、患者一人ひとりに最適な治療を提供する未来への可能性を広げていくことを強く実感しました。
最後に、このような貴重な学びの場に参加する機会を与えてくださったJALSGおよび関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。本学会で得た知識や経験を、今後の研究活動および臨床実践に役立て、血液疾患診療分野のさらなる発展に貢献してまいりたいと思います。
※InternetExplorerをご利用の場合、
ログインできない可能性がございます。
患者様はこちら
コンテンツ
JALSGとは
これまでの治療成績
臨床研究
参加施設一覧
治験情報
業績
海外学会報告
情報ライブラリー

入会案内


ご支援・ご寄付のお願い

jagse

革新的がん研究支援室

インフォメーション
セキュリティポリシー
リンクポリシー
リンク