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9.骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndromes, MDS)

 骨髄異形成症候群は、骨髄では造血細胞は十分生産されているにもかかわらず、末梢血液中では
赤血球・白血球・血小板が減っている病気です。骨髄中の血液細胞は形態学的に異形成すなわち出来損ないのような形をしていますので、骨髄異形成症候群という難しい名前が付けられています。我々は単にMDSと略しています。若年者や小児にも見られるものの、原則的には高齢者の病気です。

  しばしば急性白血病に移行することより、その本態は幹細胞レベルでのがん化によるものと考えられています。したがって、前白血病状態とも説明されます。がんであるとの根拠はMDS の半数以上に染色体異常があることと、白血病のように一個の細胞から増えているというクローン性が証明されているためです。最近、遺伝子のDNA部分には異常はないもののDNAにメチル基が付くことによって遺伝子が役目を果たせなくなる現象(DNAのメチル化)とDNA鎖が巻きついているヒストン蛋白の脱アセチル化が骨髄異形成性症候群の病因ないしは進行に関連していることが判りました。そのため、これらに対する薬が開発されており、脱アセチル化であるアザシチヂンが最近認可され、広く使用されるようになりました。

  末梢血の血球減少の種類や芽球比率、骨髄中の芽球比率や骨髄中の環状鉄芽球比率により、WHO分類に従い、表3のように分類します。骨髄中の芽球が5%未満のものを不応性貧血(RA)と環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)に分けます。つぎに、骨髄中の芽球が5%以上となったものを芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)とし、芽球が5~10%のときはタイプ-1(RAEB-1)、芽球が10~20%のときはタイプ-2(RAEB-2)の二つに分類します。「3.白血病の病態と分類」の項で説明しましたように、WHO分類では、芽球が20%以上のものを急性骨髄性白血病として分類しますので、FAB分類のRAEB in transformation(RAEB-t)は、
使用されなくなりました。また、単球増加を伴う慢性骨髄単球性白血病(CMMoL)は、骨髄異形成性症候群から外され、骨髄異形成性/骨髄増殖性疾患群の中に入れられました。

表3.骨髄異形成症候群のWHO分類 (2008年版)

分類
白血病名および疾患名
1
一系統の不応性血球減少症
 a)
不応性貧血 (RA)
 b)
不応性好中球減少症 (RN)
 c)
不応性血小板減少症 (RT)
2
環状鉄芽球を伴う不応性貧血 (RSRA)
3
多系統の不応性血球減少症 (MLRC)
4
芽球過剰の不応性貧血 (RAEB)
 1)
タイプ-1 (骨髄中の芽球が5~10%)
 2)
タイプ-2 (骨髄中の芽球が10~20%)
5
単独5q-関連骨髄異形成症候群
6
分類不能骨髄異形成症候群
7
小児骨髄異形成症候群
 骨髄異形成性症候群には、これまで有効な治療法がなかったこともあって、形態学的分類だけでは予後の予測がし難いために、予後予測のための国際分類(IPSS)もよく用いられており、低リスク群、中間リスク-1群、中間リスク-2群、高リスク群の4群に分けます。MDS はすべて急性白血病に移行する訳でなく、移行率は10~20%と言われています。しかし、血球減少症のための感染症や出血などによる死亡される患者さんもあります。生存期間は中央値で3~5年程度ですが、10年以上の長期生存例もみられます。一般的に不応性貧血と環状鉄芽球を伴う不応性貧血の段階で留まるならば予後は比較的良好ですが、骨髄中の芽球が5%以上に増加すると、治療に難反応性であり予後は不良です。

  原則的に高齢者の病気である骨髄異形成性症候群は人口の高齢化に伴い患者さんの数が増加しているにもかかわらず、これまでこれといった治療法がなかったため、患者さんには勿論のこと、医療側にとってもたいへん厄介な病気でした。移植可能な若年患者では、造血幹細胞移植が唯一の治療法であり、HLA適合ドナーが見つかれば移植を行いますが、患者さんのほとんどは移植に耐える体力のない高齢者です。

 しかしながら、嬉しいことに、最近レナリナマイドが5q-症候群に劇的な貧血回復効果を示すことが判り、わが国でも認可されました。レナリドマイドは5q-症候群以外の低リスク群および中間リスク-1群の骨髄異形成性症候群においても貧血回復効果のあることが期待されていますが、白血病に移行させやすいのではないかという懸念が出ておりますので、それらが明らかになるまでは、使用は控えた方がよいでしょう。

  また、DNAメチル化阻害薬であるアザシチヂンが中間リスク群や高リスク群の骨髄異形成性症候群に効くことが判り、わが国でも認可されました。これまで有効な治療薬のなかった骨髄異形成症候群において、その治療効果が期待されています。メチル化阻害薬という新しいタイプの薬ですが、実は、40年以上も前に抗がん薬として開発されていたのですが、臨床効果はそこそこであったため埋もれていた薬です。ところが、最近DNAのメチル化を抑える作用があることが分かり、再評価された薬です。
そのため、昔のことをよく知らない医師は、最近のメチル化阻害薬という新しい側面のみ見て、抗がん薬として持つ副作用のことをよく知らないことが少なからずあります。主な副作用である白血球減少や血小板減少などの骨髄抑制に対応しつつ、3~6か月治療を続けているうちに効果が見られてくるようになります。
 その意味でも、この薬も医師の診療実力により、患者さんの予後が左右される可能性があります。
5q-症候群に対するレナドマイド以外には、骨髄異形成症候群には有効な薬のないことを知り、上手に使っていく必要があります。
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