白血病は血液のがんです。血液は赤血球、白血球と血小板の3種の血球と、これらが浮遊している液体である血漿より成っています。血球は骨の中にある骨髄の中で作られます。白血病は正確には血液のがんではなく、血球のがんです。血球を作る細胞すなわち造血幹細胞が骨髄の中でがん化して無制限に増殖する病気です。
19世紀後半にウイルヒョウというドイツの有名な病理学者がこの病気を初めて見つけました。この時代には治療法もなく、白血病細胞がどんどん増え続けて血液が白くなるために、白い血の病気すなわち白血病と命名されたのです。傷口が化膿したときやや緑色のかかった白色の膿が出ますね。あれは白血球の塊であり、元々白色なので白血球とよばれるのです。
しかし現在では、白血病は骨髄の中で血球をつくるもとになる造血幹細胞ががん化したものと定義されており、がん細胞の血液中への出現の有無に関係ありません。早期に発見されると、白血球数は正常であったり、あるいは、むしろ減少していることが普通です。
白血病細胞は正常の造血細胞よりも早く分裂増殖すると思われているかも知れませんが、実際はそうでなく、細胞分裂してから次の細胞分裂までに要する時間は、正常造血細胞よりも2~3倍も長いことが判っています。他のがん細胞も同様です。実は、我々の正常細胞は成熟すると、計画細胞死(アポトーシスとも言います)という機構により死ぬ運命にプログラムされているのです。ところが、がん細胞ではこの計画細胞死がおこらず、そのために細胞が増え続けてがん組織になるのです。別の言い方をすれば、計画細胞死がおこらなくなった細胞が、がん細胞なのです。
ところで、漢字の「癌」と仮名で書く「がん」あるいは「ガン」は同じものと思われているかも知れませんが、正確には違っています。「癌」は上皮細胞、たとえば胃の粘膜上皮細胞や肺の気管支上皮細胞の悪性腫瘍のことであり、「がん」はこれらも含めたもっと広い意味での悪性腫瘍を言います。英語では前者はcarcinoma 、後者はcancerと使い分けています。ですから、胃癌や肺癌と書き、国立がんセンターや愛知県がんセンターと書くわけです。